旅に出た
愛する
かけがえのない
ユニークなあなたへ
年明けに岡山の祖母が亡くなった。
葬儀も無事終わったので、僕は一旦大阪へと戻り、やはり旅に出ることにした。
年末に青春18切符を買っていた。
何年も前から、青春18切符で気ままな一人旅をしてみたかったのだが、あれこれ理由をつけて先延ばしにしてきた。
人は、嫌なことややりたくないことを先延ばしにすることがあるが、それ以上に、本当にやりたいことや好きなことを先延ばしにするように思う。
今回も、アタマの中で思考と呼ばれるおしゃべりが始まる。
「宿泊の予約、1日分しかとってないよね?あとの日はどうするの?宿が確保できなかったら、凍え死んじゃうよ……」
僕は恐ろしく気まぐれなので、一応の目的地の1日分しか宿は予約しなかった。
いけないいけない。
聞いてると、旅に出るのが面倒臭くなる。
アタマの中のおしゃべりは、本当は僕の声ではないのだ。
子供のころに親や先生に言われた言葉、マスコミや世間の常識や周りの人たちの声であって、僕の外側から来たもの。
近所のおばちゃん達のおしゃべりみたいなものだ。
アタマの中の声は放っておいて、僕は5日間の旅に出ることにした。
一応の目的地は、福島県の会津柳津という山あいの小さな門前町。
会津若松から、只見線という超弩級のローカル線で山の中を走ること1時間ほどのところにある。
二日間かけてたどり着いたが、途中で乗り継ぎに失敗して、着くのが大幅に遅れてしまった。
5年ぶりにこれに参加するつもりだった。
この町にある平安時代に創建された圓蔵寺という古刹で毎年行われる七日堂参りという裸祭りだ。
だが、3時間遅れて到着したので、今回は参加することはできなかったが、ゆっくり見物することはできた。
目の保養になったし、今回はこれで良かったのかもしれない。
翌朝、旅の3日目は只見線に乗り、会津地方のさらに山奥へと行くことにした。
暖冬のためか、途中通り過ぎた会津若松も、ここ会津柳津も、例年に比べると雪が少ない。
雪が見たい。
もっと雪深い景色が見たい。
そして、訪れたことがない土地に行ってみたい。
電車が進むにつれて、車窓から見える景色は雪深くなっていく。
2011年7月の新潟・福島豪雨で鉄橋が流され不通になっている区間は代行バスに乗り換え、昼前に只見町にたどり着いた。
ここは福島県の西端で、新潟県に接し、越後山脈に囲まれた日本有数の豪雪地帯。
暖冬であっても、深い雪に閉ざされ、一面の銀世界だ。
深い雪の中を夢中で歩きまわった。
翌日、旅の4日目は、東海道線を西へと向かう途中で下車して、万葉集にも出てくる田子の浦から夕陽に映える富士山を眺めた。
この日の朝、米原駅(滋賀県)で電車を乗り換えるときに、「北陸本線」という表示を見て、日本海を見たくなったからだ。
敦賀港は裏寂れた北国の漁港だった。
港の一角に江戸時代に作られた石造りの灯籠があった。
夜毎この灯籠に明かりが灯されていた頃、この港は、各地の産物を積んだ北前船で賑わっていたはずだ。
港のすぐそばの店で、地酒を飲みながら天然物の刺身を食べた。
あじ、ひらまさ、しめ鯖…どれも美味しい。
なかでも寒ブリが最高だった。
口の中でふわっと溶けていく。
青春18切符は、1枚で1人なら5日間、JRの普通列車が乗り放題になるし、何度でも途中下車ができる。
友達5人で1日の旅行を楽しむという使い方もできる。
年齢制限はありません。
50過ぎの俺でも使えます。
チケットショップで買うと、定価( 11,850円)より数百円安く買えるし、使い残し分を買い取ってもらえる場合もあるよ。
いつも
あなたがあなたらしく
幸せであることを祈っています